【忘れる力の大切さ】過去に引きずられないためにできること

失敗した経験や、恥ずかしかった経験、誰かに言われて傷ついた言葉、思い通りにいかなかった出来事。
私たちは日々さまざまなことに直面します。そして、その中にはどうしても忘れられない、心に引っかかる「ネガティブで嫌な記憶」もあると思います。
スポーツでも、ビジネスでも、日常生活でも同じです。
「なぜあのとき、あんな事をしてしまったのか」「またうまくいかなかった」などと、過去の出来事が繰り返し頭をの中よぎり、後ろ髪を引かれるような感じで、今に集中できない。そうした経験は、多くの方が少なからず持っているのではないでしょうか。
今回は、「忘れる力」の重要性について掘り下げてみたいと思います。
忘れられる人ほど、前に進める
私自身の経験から言っても、結果を残す人や、常に前向きな人には「忘れる力」がしっかり備わっているように感じます。
たとえば、試合で大きなミスをしてしまった選手。
試合後に落ち込むのは当然ですが、そのまま引きずるか、切り替えて次の練習に集中できるかで、成長のスピードは大きく変わります。
逆に、ネガティブな感情にとらわれてしまう人や、切り替えられずに目の前のタスクに集中できない人は、過去の記憶を必要以上に抱え込みすぎている傾向があります。
頭の中で何度も何度も嫌な記憶を再生し、「また失敗するかもしれない」と必要以上に不安を抱いてしまう──。この状態では、心も体も前に進むのが難しくなります。
忘れられない理由は「ストーリー化」の習慣
では、なぜ私たちは嫌な記憶を簡単に忘れられないのでしょうか。
その一因として、「ストーリー化の癖」があると思います。
失敗した出来事を、過去の他の失敗や自分の性格と結びつけて、「私はいつもこうだ」「こういう時は毎回うまくいかない」「性格的にも失敗するタイプだ」と、一つの物語のようにまとめてしまうのです。
たとえば、
「前も似たようなことでうまくいかなかったし、やっぱり自分はダメだ」
「こんなに頑張っても報われないなんて、人生ってうまくいかないものだ」
というように、「事実」と「解釈」が自分の中で混ざってしまっている状態です。
しかし、本来それらは別々に考えるべきです。
「頑張った」という事実と、「今回ミスをした」という事実は、つながっているように感じても、同じではありません。ましてや「だから自分はダメだ」というのは主観的な解釈であって、客観的な事実ではありません。
一つひとつの出来事を冷静に切り分ける。
実際に考え込んでしまっている時に、そう考えるのはとても難しいことだと思います。なので日頃から、事実と解釈を切り分けて考えておくこと。ストーリー化しないこと。
それが「忘れる」ための第一歩です。
「諦める力」もまた、忘れる力の一部
忘れるために必要なのは、「諦める」という視点もあります。
もちろん、結果に対する反省や改善は重要です。
しかし、すでに起こってしまった過去を、何度悔やんでも変えることはできません。
反省と引きずることは、似て非なるものです。
「忘れる」のが苦手は人は、「深く考え続けること=反省」だと誤解してしまいがちです。
でも、ただ落ち込むだけで何も変わらない時間を過ごすのは、建設的とは言えません。
「もう終わったことなんだ」と認め、次回に向けて行動する。
若干ネガティブなイメージの「諦め」という言葉ですが、同時に前を向くための勇気でもあります。
「別のこと」に意識を向ける
それでもなかなか忘れられない──というパターンもあるかと思います。そんなときは、別のことに意識を向けてみましょう。
特に、別のタスクに集中することは効果的な手段です。
人間の脳は「空白」を作ると、自然とそこに悩みや不安が入り込んできます。
考える余白があると、つい過去のことを繰り返し考えてしまうのです。つまり、「悩んで考え続けてしまう」=「脳が暇な状態」という事です。
・体を動かす
・作業に没頭する
・新しい挑戦に取り組む
そうした「別のタスク」に自分の意識を向けることが、結果的に過去を手放すことにつながります。
経験上、できるだけ重くない単純なタスクだと、考えずに没頭しやすいです。
忘れることは、前に進むための「選択」
忘れることは、逃げではありません。むしろ「忘れる力」は、次に進むために私たちにとって備えるべき必要な能力です。
何度も思い出してしまうのは人間の防衛本能の一部ですが、それに引っ張られすぎないよう、意識的に環境や行動を変えていくことが大切です。
もし今、何かネガティブなことを忘れられない状況にあるなら、
・場所を変える
・人と話す
・大きく深呼吸する
・思い出してしまう習慣を見直す
などの日常の小さな工夫からでも、「忘れるきっかけ」は生まれます。
嫌な経験や苦い思い出は、「とっとと忘れてしまおう」と自分で意識的に選択していくことが重要です。
おわりに
誰にでも、うまくいかない瞬間はあります。
大切なのは、「それをどのように捉え、手放すか」ということ。
嫌な記憶や過去の失敗を、物語のようにして抱え込んでしまうのではなく、
それらを一つの出来事として切り離し、必要な反省だけをして前に進むこと。
「忘れる力」を身につけることは、自分のポテンシャルを高めるための土台になると思います。
どんなに苦い経験でも、それは明日の自分を強くする材料になる。
一つ忘れるごとに、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
最後に
以前、道路の側溝に買いたてのAirPodsの片耳を落とした後は、後ろ髪を引かれる思いで2台目を購入しました。